2005年08月17日

錐の、のう中(のうちゅう)に処るが若し、
     其の末立ちどころに見る

『史記』 平原君・虞卿列伝 (前漢)

「若錐之処於●中、其末立見」 
(きりののうちゅうにおるがごとし、そのすえたちどころにあらわる)

※●=「のう」。なべぶたにくち、くち、うかんむり、「襄」の下の部分。
ふくろ、の意。

すぐれた人物というものは、袋の中の錐の先が袋を破って突き出るように、
いつかは必ずそのすぐれた才が外に現れ出る。

「のう中の錐」ともいう。

               ※※

逆境にあっても腐らず、時を待て。
修養を忘れず、技量を磨けば、必ず世に出ることができる。
真に才があれば、世の中が放っておくものなどか――。

posted by 「言葉の力」研究所 at 17:31| カ行 ……カキクケコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

疑心暗鬼を生ず

『列子』 説符
疑心生暗鬼(ぎしん、あんきをしょうず)

心に疑いがあると、ありもしない鬼の姿を見たりするように、
さまざまな恐ろしい妄想が生まれてくる。

冷静にみれば何でもないことが恐ろしく感じられたり、
疑わしく思えたりする心の状態をいう。

「暗鬼」とは暗がりに出る幽霊や鬼。

               ※※

自らの考え、信条に自信が欠けているときにも、
おうおうにして、疑心暗鬼となることが……。
しっかり人物を、そして情況を見極めたいもの。
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2005年08月16日

莞を以て天を窺い、蠡(ひさご)を以て海を測る。

東方朔(とうぼうさく) 「答客難(きゃくのなんずるにこたう」  (前漢)

以莞窺天、以蠡測海 
(かんをもっててんをうがち、ひさごをもってうみをはかる)

イグサの穴から天をのぞき、蠡(ひさご)を用いて海を測る。
見聞や思考の範囲の狭い小知で大知をはかることのたとえ。
「莞」は藺草(いぐさ)。「蠡」は瓠でひさご。

               ※※

「井の中の蛙、大海を知らず」に近い意。
posted by 「言葉の力」研究所 at 23:54| カ行 ……カキクケコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

歓楽極まって哀情多し

漢武帝(かんぶてい) 『秋風辞(しゅうふうじ)』  (前漢)

歓楽極兮哀情多。(かんらくきわまってあいじょうおおし)

喜ぴや楽しみが最高潮に達すると、どういうわけか、
かえって胸のうちにかなしみを覚える。

               ※※

河東地方において、地の神后土を祭り、
酒宴を開いた折に作った「秋風の辞」の一節。

栄華の絶頂にあった武帝(劉徹、りゅうてつ)が、
漢の勢いのさかんなことを歌いながらも、その一方に、
ふと人生のはかなさを感じてしまった。

               ※※

華やかさの陰に孤独あり、葛藤あり、諦念あり。
posted by 「言葉の力」研究所 at 23:40| カ行 ……カキクケコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

渇者は火を思わず、寒者は水を求めず

韋応物(いおうぶつ) 
「城中臥疾(じょうちゅうやまいにふす)」詩 -唐-

渇者不思火、寒者不求水。
(かっしゃはひをおもわず、かんじゃはみずをもとめず)

のどが渇いている者は水を求めているのであって、
暖をとるための火を求めたいとは思わない。
また逆に寒さに凍えている者は、水を欲したりはせず、
暖を求めているのだ。

人はおのおの、その当面の欲求を満たしてくれるものこそを希求する。
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燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや

『史記』陳渉世家(しき、ちんしょうせいか) -前漢-
燕雀安知鴻鵠之志哉(えんじゃくいずくんぞこうこくのしをしらんや)

ツバメやスズメのような小さい鳥に、どうして
鴻(おおとり)や鵠(くぐい)のような大きい鳥の心がわかろうか、わかりはしない。

小人物には、大人物の遠大な志がわかるものではない。
後に楚王(そおう)となる陳渉が、日雇い仲間の
志が自分より小さいことを嘆いたことば。
posted by 「言葉の力」研究所 at 21:56| ア行 ……アイウエオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

飢えたる者は食を為し易く、渇したる者は飲を為し易し。

『孟子』公孫丑・上 -先奏-
「飢者易為食、渇者易為飲」
(うえたるものしょくしやすく、かっしたるものいんしやすし)

飢えている者は、食ぺ物を選ばずどんな物でもむしゃぶりついて食べようとするし、
喉の渇いた者は、飲み物を選ばず飲もうとする。

               ※※

切羽詰れば、体裁など気にしていられない。
また、飢渇は、ときに人の判断、正邪の区別を誤らせる。

               ※※
(参考)

飢えたる者は食を甘しとし、渇したる者は飲を甘しとす

『孟子』盡心・上 -先奏-
「飢者甘食、渇者甘飲」 
(うえたるものはしょくをあましとし、かっしたるものはいんをあましとす)

※上記の言葉とほとんど同じ意味の言葉。別々の場所に、
ほんの少し、表現を変えて登場しているのだと思われる。
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一葉目を蔽えぱ泰山を見ず、
      両豆耳を塞げぱ雷霆を聞かず

『●冠子(かつかんし)』 天則 (先奏)

「一葉蔽目不見泰山 両豆塞耳不聞雷霆」 
(いちようめをおおえばたいざんをみず
りょうとうみみをふさげばらいていをきかず)
※●は曷へんに鳥の字。カツ、やまどり。

一枚の葉で目をおおうと泰山のような大きな山も見えなくなる。
2つの豆で耳をふさぐと雷鳴も聞こえなくなる。

わずかな悪心から、大きな道理を見失ってしまうことのたとえ。
「泰山」は山東省にある名山。

               ※※

ちょっとしたことで物事の真理を見誤り、誤った判断、行動をとってはならない。
小さなことを見過ごしてはならないし、兆候を軽んじてもいけない。
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新たに沐する者は必ず冠を弾き、
      新たに浴する者は必ず衣を振るう

屈原(くつげん)『漁父辞(ぎょほのじ)』 (先秦)
「新沐者必弾冠、新浴者必振衣髪」
(あらたにもくするものはかならずかんむりをはじき、
あらたによくするものはかならずころもをふるう)

髪を洗ったばかりの者は、冠の塵(ちり)をはじき落としてからかぶり、
入浴したての者は、衣服のほこりを振るってから着る。
身の潔白を守るためには、汚れたものを受け入れることはできない。

身の破滅を招こうとも、自己の信念を貫こうとする屈原のことば。
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功無きの臣を官せず、戦わざるの士を賞せず

曹操『論吏士行能令』
「不官無功之臣 不賞不戦之士」
(こうなきのしんをかんせず、たたかわざるのしをしょうせず)

賢明な君主は功績のない臣下は重職として登用しないし、
戦わない兵士を讃えたりしたりしないもの。

人事は公明正大に――ということ。
論功行賞を恣意的に行えば組織の統制は乱れる。


『韓非子』の「信賞必罰」に近い言葉。
posted by 「言葉の力」研究所 at 18:36| カ行 ……カキクケコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

公事は私に議せず

『礼記』

「公事不私議」 (こうじはわたくしにぎせず)

公的な事柄を私的なところで議論すべきではない。
そのことをはかるべき場があるのだから、それ以外のところで、
あれこれ取り沙汰してはいけない。

               ※※

陰でばかり意見している人物は、
結局、信用されないし、評価もされない。

posted by 「言葉の力」研究所 at 18:23| カ行 ……カキクケコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月15日

「孫子」が一瞬でわかる11の言葉!――yodaway2選

● 彼を知りて己を知れば、百戦して殆(あや)うからず。
  彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。
  彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆うし。


相手を知って自分のこともわかっていれば、百度戦っても危ないことはない。
相手のことはよくわからないとしても、自分のことがわかっていれば、
勝ったり負けたりということになるだろう。相手のこともよく知らない、
そして自分のこともわからないという状態であれば、
戦いの度に、決まって危険な目に陥ってしまう」――ということになる。


● 兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。

戦争は国家の命運を決める大事な問題。国民の生死が決まり、
国家存亡の分かれ道となる。だから、そこのところを
よくよく考えて行わなければならない。

※「孫子」の一番最初に出てくる言葉。


● 兵は詭道(きどう)なり。

戦争はだまし合いである。

※これこそ、「孫子」の中心的な命題。


● 算多きは勝ち、算少なきは勝たず。
  而(しか)るを況(いわ)んや算なきに於いてをや。


戦いは勝ち目があるから勝ち、勝ち目が少なければ勝てない。
だから、ましていわんや、勝ち目がまったくないのに戦っても、勝てるはずがない。

※戦争するからには、よく計算してからにせよ、ということ。精神論はダメ。


● 兵は拙速(せっそく)なるを聞くも、いまだ功の久しきを賭(み)ず。

古来、戦いはすばやく集中してやるのが良いとは聞いているが、
ぐずぐずだらだらやって、国家国民のためになったなどという例はない。

※長期戦は避けよ、泥沼になっては危険このうえなし。


● 百戦百勝は善の善なるものにあらず。
  戦わずして人の兵を屈するは、善の善なるものなり。


百回戦って百回勝ったからといっても、それがベストな戦い方とは言えない。
戦わずして敵の軍隊を降伏させてしまうのが、最もすぐれた戦い方なのだ。

※「孫子」のなかで、私たち日本人が最も愛してきた言葉?
戦わずして勝つ――!


● 戦勢は奇正に過ぎざるも、奇正の変は
  勝(あ)げて窮むべからざるなり。


戦いの形は奇(奇襲戦法)か正(正攻法)かのどちらかに過ぎないのだが、
その奇と正が織りなす変化の形は無限となる。

※千変万化、変幻自在の戦術で戦いに臨め、ということ。


● 兵の形は実を避けて虚を撃つ。

戦いの形、作戦は、敵の備えの厚いところを避け、
隙のあるところ、手薄なところ、油断しているところ、すなわち「虚」を衝け。

※個人的に「実を避けて虚を撃つ」、この言葉こそ
「孫子」のもっとも重要な言葉と考えている。よって★★★。
この言葉の前に「兵の形は水に象(かた)どる」がある。これも重要。


● 兵は詐(さ)を以て立ち、利を以て動き、
  分合(ぶんごう)を以て変を為す者なり。


戦いでは敵の裏をかくことを中心にすべきだし、
有利なところを見極めて動くべきだし、
自在に分散したり集合したりして変化の形をとっていくべきだ。

※繰り返し、繰り返し、「孫子」は”変化せよ”、と説いている。


● 主は怒りを以て師を興すべからず、
  将はいきどおりを以て戦いを致すべからず。


君主は怒りにまかせて軍を動かすべきでないし、
将軍も憤りに任せて戦ってはならない。

※冷静であれ、と説く。「孫子」はクールで、物事に
とらわれない姿勢を求めている。


● 先知なる者は鬼神に取るべからず。
       ……必ず人に取りて敵の情を知る者なり。


あらかじめ戦いの帰趨を知る者は鬼神のおかげではない。
必ず人(間諜)に頼ってこそ、敵の情報を得て先を読むことができるのだ。

※「孫子」の最後の章は「用間篇」。
すなわち間諜、スパイの効用、情報の重要性を説いている。
これが2500年前の書だ。


               ※※

■ 「孫子」について……古今のリーダーに啓示を与える必読の書。

「孫子」はいまからおよそ2500年前、中国古代(春秋時代)に生まれた
戦いの書、戦争の理論書――。
著者は諸説あったが、最近の研究では孫武に落ち着いている。

当然のことながら、「孫子」が時代を超えて読み継がれ、
さらに西洋など、異なる文化圏にまで支持されているというのは、
その言わんとするところが、いつの時代にも、人間の行いの所産としての
政治、外交、ビジネス、人間関係のすべてに通じているがゆえのこと。

事実、「孫子」から歴史上の、そして現代のリーダーたちが
多くの啓示を受けてきた例は、数多く紹介されている。

               ※※

ナポレオンはフランス人宣教師の訳した「孫子」を
多忙な戦陣にあっても片時とも手放そうとしなかった。

独皇帝ヴィルヘルム2世は第1次世界大戦に破れ、亡命先のロンドンで
初めて「孫子」を手にし、次のような悔恨の言葉を残している。
「もし私が、20年前にこの書を得ていたならば、あのような惨敗は
まぬがれていただろう」と。

現代の中国、中華人民共和国を建国した毛沢東もまた、
「孫子」を座右の書とし、抗日戦と国共内戦とに勝利した。

日本において「孫子」を中国から初めて持ち帰ったのは、
8世紀の遣唐使、吉備真備と言われている。
以来……、中国においても
「家ごとに孫呉(孫子と呉子、どちらも兵法書)の書を蔵す」(「韓非子」)と言われ、
もちろんよく読まれてきたのだが、日本においても
本家・中国に遜色ないほど読まれ、例外なく武将の必読書となった。

武田信玄の旗印「風林火山」も「孫子」の一節からとられたもの。
徳川家康が官版「武経七書(代表的な7つの兵法書、全集のようなもの)」を
刊行させたことが契機になって、江戸時代には儒者が競って注釈を書いた。

               ※※

現代ではどうか……。

「孫子」は、米国のウエスト・ポイント米陸軍士官学校で
長く副読本となっているらしい。

先の湾岸戦争において、制服組の最高司令官であった
パウエル氏(現国務長官)もナポレオンのように「孫子」を愛読し、
やはり戦陣に携えていたという。

その湾岸戦争中に、ロサンゼルス・タイムズの記者が
ジョージ・H・ブッシュ大統領(父ブッシュ)にインタビューするため、
ホワイトハウスの執務室を訪れたところ、机の上にあった2冊の書のうち1冊が
「孫子」だった――。ちなみに、もう1冊は「カエサル伝」だったという。



★本稿はトピックス版です。通常の「名言名句」はブログ機能を活用・工夫し、
アカサタナ…行別に整理し、データベース仕立てにしています。
だいたい、1日に5つくらいの名言名句をアップしていければよいのですが。^^
posted by 「言葉の力」研究所 at 00:00| 超速習!「孫子」のことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月01日

このブログ――「中国古典の名言名句」について

ずっと中国古典に興味を抱いてきました。
このブログ――『中国古典の名言名句』は、私自身の
勉強メモのようなものです。

浅学非才を顧みず、コツコツ、手の開いたときに
書き足していこうと考えています。

正直に言って、どこまでつくれるか、
実はそれほど自信があるわけではありません。
しかし、サブタイトル「1000選!」と銘打ちましたが、
続けていれば、いつかそうなると思います。

もし、偶然にもこのブログにお越しいただいた方には、
心からなる歓迎の意を表したいと思います。
気が向いたときに、また来ていただければうれしいかぎりです。

もし、コメント、トラックバックをいただけるのでしたら、
このページにくださるよう、お願いします。

誤字脱字、誤謬のご指摘なども、こちらにお願いいたします。

亭主、yodaway2 敬白



               ※※
<共通参考文献>
・「中国古典名言事典」諸橋轍次著、講談社学術文庫、昭和54年第1刷
・「中国の古典名著 総解説」 自由国民社、1991年改訂版第1刷刊 
・「新版漢語林」 鎌田正・米山寅太郎著、大修館書店刊、平成6年初版刊
・「広辞苑」(第5版) 新村出編 岩波書店
・インフォシークマルチ辞書(漢字辞典) by 三省堂

    その他、多数の書籍、辞書・事典類。
    原点(邦訳含む)は割愛させていただきます。 
posted by 「言葉の力」研究所 at 00:00| Comment(3) | TrackBack(1) | コメント&TBはこちらへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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